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> 鉄欠乏性貧血の原因と症状

鉄欠乏性貧血の原因は何?どんな症状が現れる?

 鉄欠乏性貧血は赤血球の主原料となる鉄が不足することで起こる貧血です。貧血全体の7割を占めており「貧血の代名詞」とも言えますが、鉄不足の原因を特定すれば治りやすいという特徴もあります。

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 メディカルアーカイブ所属
 薬剤師 松田俊浩※

目次

※当サイトは医療専門職が監修した貧血に関する情報を提供していますが、インターネットや本の情報だけで自己診断するのは大変危険です。疑われる症状がある場合は専門医を受診する必要があります。貧血の原因は様々あるため、まずは内科を受診することをお勧めします。

鉄欠乏性貧血の原因は一体なに?

食生活での鉄不足
 成人男性や閉経後の女性が1日に必要とする鉄の量は1mgです。しかし、食事から鉄分を摂っても消化管からの鉄吸収率が10%なので、1日の食事では10mgの鉄を摂らなければなりません。

 さらに、成長期(14〜16歳)の男性や生理のある女性は12mg、妊婦さんは18mgくらいの鉄が必要になります。

 一般的には1000kcalあたりの食事に6mgの鉄分が含まれており、2000kcalでは12mgの鉄となりますが、生理による出血や妊娠中はどうしても不足がちになってしまいます。30年以上前の日本人は1日に13mg以上の鉄分を摂取していましたが、現在は1日7mgと大きく減少しています。


鉄がうまく吸収できない

 鉄分の摂取不足ばかり意識されがちですが、原因としてあまり知られていないのが鉄の吸収不良です。食事に含まれる鉄分は消化され十二指腸から吸収されますが、健康な人でも鉄吸収率は10%ほどであり、消化器の病気になると鉄の吸収がうまく行われない事があります。

 また胃を切除すると胃酸の分泌が行われないため、鉄の溶けにくくなり吸収率が悪くなります。

 鉄欠乏性貧血は鉄不足ばかりに注目が集まりますが、体内に鉄を吸収するためにはタンパク質やビタミンが必要になります。ダイエットなどで偏った食事をしている場合、せっかく鉄分を摂取してもうまく吸収できないことがあります。


慢性的な出血

 慢性的な出血とは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸がんなどの消化管の疾患や子宮筋腫などにより継続的に少しずつ出血していることをいいます。

 少しずつの出血であるため気づかずに血液を失っている事になります。この慢性的な出血は鉄欠乏性貧血の原因として最も多いもので、体内の鉄の損失に直結しています。

 生理も毎月の出血であるので、この慢性的な出血に当てはまります。生理では月当たり平均40mLの出血があり、鉄として20mgの損失になります。

 生理のない成人男性や閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になった場合は、何らかの病気によって出血が起こっている可能性が高く、病院で検査を受けてみる事をお勧めします。

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鉄欠乏性貧血の症状は全身に現れる

 人間の体には全部で約4gほどの鉄が存在しますが、2/3は血液の中にあり、残りは肝臓や脾臓などに蓄えられています。また一部は皮膚や粘膜の組織内にあります。

 通常は食事から得られる鉄量と排泄する鉄量のバランスがとれていますが、何らかの原因で鉄が不足すると、まず蓄えられた鉄を使用します。そのため、鉄が不足したからといってすぐに貧血の症状は現れません(この状態を隠れ貧血といいます)。

 貯蔵鉄が完全になくなると全身が貧血となり、貧血の症状が現れ始めます。さらに組織に鉄分がなくなると、爪がスプーン状に反り返ったり、舌の表面がツルツルになるなど鉄欠乏性貧血特有の症状が現れてきます。

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鉄欠乏性貧血の特徴的な症状

 貧血の代表的な症状といえば「だるい」「めまいがする」「動悸や息切れ」などがありますが、鉄欠乏性貧血の特徴的な症状として以下のものがあります。

  煎餅など硬いものを大量に食べたくなる(異食症)
  爪がスプーン状に反り返る
  舌の表面がツルツルになる
  酸味がしみる
  肌がカサカサになる
  抜け毛や枝毛が多くなる
  口内炎・口角炎になりやすくなる
  食べ物が飲み込みにくくなる



異食症

 異食症とは通常食べる事のないものを無性に食べたくなってしまう症状で、鉄欠乏性貧血や心の病などで発症します。鉄欠乏性貧血の場合はバリバリとした食感のもの(氷や硬い煎餅など)を好んで食べる傾向にあり、時には土壁を食べてしまう場合もあります。

 どうしてこのような行動に出るのかははっきりわかっていません。脳が酸素不足になったり、体内の鉄分が不足することで中枢神経になんらかの異常をきたしていると考えられます。

 このような症状が現れた場合は、鉄剤を服用して鉄分を摂取すると数日で治まります。ただし、異食症の症状が治まっても貧血が治ったわけではありません。


爪が変形する

 鉄欠乏性貧血になると血液中の赤い色素が少なくなるため、肌が血色のない白色になったり、ピンク色の爪が白っぽくなったりします。

 さらに貧血がひどくなると、爪がスプーン上に反り返ったり(さじ状爪)、爪が弱くなることで割れたり、表面がはがれたり、溝状のデコボコになったりします。

味覚変化や嚥下障害

 舌の表面には小さなブツブツがあり、そこには味覚を感じる味蕾(みらい)があります。鉄欠乏性貧血がひどくなると、このブツブツがなくなって舌の表面がツルツルになり、味覚障害が起きることがあります。

 また、食道の粘膜が萎縮して食道内が狭くなり、食べ物を飲み込みにくくなることもあります。

次の記事
治療はどうやって行う?ポイントは食事と鉄剤


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 鉄動態からみた鉄欠乏性貧血と二次性貧血 日本内科学会

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薬剤師のイメージ
<この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属 薬剤師 松田俊浩※
<著者の略歴>
 貧血全般はもちろんのこと、血液の病気や栄養学を専門として活動しており、貧血の正しい知識や食事療法の指導を行っている。