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脳貧血って一体なに?脳貧血の原因・症状と対処法

 急に立ち上がった時に意識が遠くなったり、目の前が真っ暗になると「貧血」だと思われがちですが、これは脳貧血であり、貧血とはまったく関係がありません。脳貧血とは一体なんでしょうか?

薬剤師のイメージ <この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属
 薬剤師 松田俊浩※

目次

※当サイトは医療専門職が監修した貧血に関する情報を提供していますが、インターネットや本の情報だけで自己診断するのは大変危険です。疑われる症状がある場合は専門医を受診する必要があります。貧血の原因は様々あるため、まずは内科を受診することをお勧めします。

脳貧血とはどんな病気?
貧血とはまったく異なる

 急に立ち上がった時や、朝礼などで長時間立ち続けた時に、めまいや立ちくらみ、気分が悪くなって倒れてしまった経験のある人は決して少なくありません。

 また、排尿時や排便時、お酒をたくさん飲んだ時に顔面蒼白で意識を失う、いわゆる失神を経験した方もいると思います。

 立ち上がったりした時にフラフラっと立ちくらみが起こると「私は貧血だ」と思われがちです。でも、健康診断で血液検査をしても、赤血球数やヘモグロビン値は正常で貧血ではない…。そんな経験はありませんか?

酸欠状態になった脳

 これらの症状は貧血によるものではなく、脳貧血が原因で起こります。

 脳貧血とは、急に立ち上がったり、起き上がったりする際や、強い痛みを感じたり、排尿や排便をする際、一時的に血圧が下がることで脳に十分な血液が行かなくなるために起こります。つまり、脳貧血は脳が酸欠状態となることで、めまいや立ちくらみ、失神が起こる病気の総称です。

 脳貧血は起立性低血圧や血管迷走神経失神が原因であるため、貧血とはまったく異なります。貧血は鉄分不足や造血機能の低下で赤血球が減少することによって発症しますが、脳貧血は血液を調べても異常はありません。

 脳貧血は貧血の文字を含んでいるため、貧血の仲間であると思われがちですが、脳貧血と貧血はまったく異なります。

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脳貧血の原因とは?
起立性低血圧と血管迷走神経失神

 脳貧血は起立性低血圧や血管迷走神経失神など、脳への血流不足で起こる症状の総称であり、いずれも血圧が低下して脳に十分な血液が送られないために起こります。

 座っていたり寝ていたりすると、下肢に血液がたまりやすくなり、急に立ち上がることで上半身の血流が不足し、血圧が下がるために、ふらつきや失神を起こしますが、これを起立性低血圧といいます。

脳貧血によるふらつき

 健常な身体であれば、起き上がると同時に心拍を高めたり、血管を収縮させて血圧を維持しようとするため血圧が下がることはありませんが、なんらかの原因で血圧維持がうまくいかず、血圧が20mmHg以上下がると脳貧血の症状が現れます。

 また、脳貧血は血圧の維持機能がなんらかの原因でうまくいかなくなると起こりますが、その原因の1つが血管迷走神経反射です。迷走神経は体内に広く分布している神経であり、心臓や血管の働きの調節に関与しています。

 そのため、強い痛みやストレス、排便、排尿などによって迷走神経が刺激されると、その刺激が脳幹血管運動中枢に伝わることで心拍を低下させたり、血管を拡張したりすることで、血圧を一時的に下げる働きがあります。この一連の反応を血管迷走神経反射といい、これによって起こる失神を血管迷走神経失神といいます。

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脳貧血になりやすい人ってどんな人?

 自律神経は血管の収縮などで血圧を調節していますが、精神的ストレスなどで自律神経が乱れる自律神経障害が起こると、血圧が維持できなくなることで立ちくらみやめまいなど脳貧血の症状が現れます。

 特に10代では、思春期の心の悩みや体の変化など、精神的ストレスなどによって自律神経障害が起こり、それが原因となって脳貧血になることも少なくありません。

ストレスを抱えた女性

 また、脱水による体液量の減少や、利尿薬や降圧薬を服用することによる血圧の低下、高齢者の場合は血圧調節機能がうまく働かなくなったり、心臓の血液拍出機能が低下することで、脳貧血の症状が現れやすくなります。

 このほか、排尿時に突然意識を失ってしまう排尿失神もあります。尿をギリギリまで我慢して膀胱が満タンになると、交感神経が刺激されて血管が収縮し、血圧が高くなります。しかし、排尿することで副交感神経が刺激されて血管が拡張し、血圧が一気に下がることで脳貧血を起こしてしまいます。



下肢の筋肉が発達すると起こりにくい

 小学校の朝礼などで長時間立ち続けていると、気分が悪くなって倒れたりする小学生がいますが、これも脳貧血です。子供は下肢の筋力が弱いため、立ち続けている事で重力で血液が足のほうへ下がってしまい、脳に血液があまりいかなくなるために脳貧血が起こります。

 私たちが立っている時に血液が一番たまるのは足の静脈です。もともと静脈には血液を送り出す力はほとんどなく、血管周辺の筋肉の収縮を利用するなどして静脈血を上にあげています。

弱い筋肉

 しかし、成長過程にある小学生ではそのような筋肉がしっかりできていなかったり、血管の弾力性に乏しい子供がいます。

 そのような子供が長時間立ち続けていると、下肢にたまった静脈血を脳まで押し上げてやることができなくなり、脳貧血が起こります。筋肉がしっかりと形成された大人では子供の時のような脳貧血は起こりにくくなります。

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脳貧血の症状とは
どんな症状が現れる?

 脳貧血の症状には現れやすい状況があります。起立性低血圧の場合は、急に立ち上がったり、長時間立っていることで起こりやすくなります。起立性低血圧の診断基準は、横になった状態から立ち上がって3分以内に血圧が20mmHg以上下がることとなっています。

 具体的な症状としては、立ちくらみがする、気が遠くなる、頭がフラフラするなどのめまいがする、錯乱する、目の前が真っ暗になるなどの視野障害が起きる、手足や全身がしびれる、頭痛などがあります。

脳貧血による動悸

 血管迷走神経失神の主な症状は、一時的に意識を失う失神です。血管迷走神経失神は失神全体の約2割を占めており、失神前に冷や汗や動悸、吐き気などの症状が現れる事もあります。

 意識を失って倒れたりすると重病のようなイメージがありますが、原因は脳への一時的な血流不足であるため、脳貧血で健康を害することはほとんどありません。

 脳貧血で恐いのは立ちくらみなどの症状よりも、意識消失によって転倒し、頭を強打するなどの二次障害ですので注意が必要です。

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(頭痛・吐き気・眠気・目・めまい・動悸…)


起きた時の効果的な対処法とは

 脳貧血は脳への血流障害が原因で起こるため、症状が現れた場合には脳に十分な血液を送り届けてあげる必要があります。具体的な対処法として、以下の例が挙げられます。

すぐに横になって休息する

 めまいがした状態で動き回らず、横になって脳に血液を送るようにしましょう。この時、足を頭より高くするとより脳に血液が送られやすくなるため効果的です。


その場でしゃがむか座る

 症状が現れた際には上記のように横になることが効果的ですが、どこでも横になれるわけではありません。その場合には、なるべく頭を低くするようにしゃがむか、座るようにしましょう。

脳貧血の予防法とは

 脳貧血は起こりやすい人もいれば、まったく起こらない人もいます。もし、自分は脳貧血が起こりやすいという方は、転倒による二次障害を防ぐためにも脳貧血を起こさない予防対策をする必要があります。具体的な予防法として、以下の例が挙げられます。

急に起き上がったりしない

 立ち上がったりすると脳貧血が起こりやすい人は、横になった状態から急に立ち上がったりしないようにしましょう。特に朝起きて慌てて起き上がってしまう人がいますが、ベッドサイドなどで一呼吸おいてから、ゆっくり立ち上がるようにしましょう。

長時間立ち続けない

 朝礼などで長時間立ち続けていると、重力で下肢に血液がたまり、脳への血液量が少なくなるために脳貧血が起こりやすくなります。脳貧血が起こりやすい人は、長時間立ち続けないようにすることと、気分が悪くなって倒れる前に座ったりするなど、姿勢を低くするようにしましょう。


運動で下肢の筋肉を鍛える

 下半身には心臓がないため、重力によって下肢に下がった血液を上半身に送り出すには、下肢の筋肉が心臓の役割を果たしています。そのため、下肢の筋肉が衰えている人は血液循環も悪くなりがちです。脳貧血を起こさないためにも、ジョギングなどの運動によって下肢の筋肉を鍛えると効果的です。

ストレスの軽減と規則正しい生活

 自律神経は血圧の調節に深く関わっているため、疲労やストレスによって自律神経障害が発生すると、血圧のコントロールがうまくいかなくなり、脳貧血が起こりやすくなります。

 そのため、一日三食きちんと摂る事や、十分な睡眠をとるなど、規則正しい生活を送るのはもちろんのこと、ストレスを溜めこまないようにすることが脳貧血の予防につながります。

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<この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属 薬剤師 松田俊浩※
<著者の略歴>
 貧血全般はもちろんのこと、血液の病気や栄養学を専門として活動しており、貧血の正しい知識や食事療法の指導を行っている。