貧血の原因には食生活の鉄不足や慢性的な出血など数多くありますが、共通点はいずれも血液中の赤血球が不足し、体内の細胞が酸欠状態となる事です。貧血は原因が特定できれば治療しやすいのも特徴です。
貧血の原因には様々なものがありますが、共通していることは細胞への酸素供給の役割を担っている血液中の赤血球が減少し、体内の細胞が酸素欠乏状態になってしまうということです。
では、どうして血液中の赤血球が減少するのでしょうか?この原因は大きく分けると、以下の3つに分類されます。
@ 赤血球の生産量が低下している
A 赤血球が破壊されている
B 継続的に出血が起きている
貧血といえば「鉄欠乏性貧血」のイメージが強いため、原因といえば「鉄分の不足」と思われがちです。しかし、上記のような原因によって鉄欠乏性貧血のほか、赤血球を正常につくることができなくなる再生不良性貧血、赤血球の寿命よりも早く赤血球が壊されてしまう溶血性貧血などもあります。
また、腎障害によって赤血球の産生に必須のホルモン分泌が行えないために起こる腎性貧血、ビタミンB12や葉酸の不足によって赤血球が十分に成熟しない巨赤芽球性貧血、胃の障害によってビタミンB12の吸収不良が招く悪性貧血などもあり、原因は多種多様にあると言えます。
貧血には鉄欠乏性貧血のような治りやすいものもあれば、生命の危険がある難病もあるため、症状が現れたからといって安易に鉄不足が原因と決めつけるのは大変危険です。
全体の7割を占める鉄欠乏性貧血は、この原因に当てはまります。赤血球は骨髄で造血幹細胞から造られていますが、赤血球の原料となる鉄分のほかタンパク質やビタミンB12、葉酸などが不足しても赤血球を造る事ができず、赤血球が不足して貧血となります。
鉄分の摂取が不足している場合
私たちの体内には3〜4gの鉄が存在し、様々な形で存在しています。赤血球の寿命は120日程度であり、寿命を迎えた赤血球は脾臓で破壊されます。その際、破壊される赤血球に存在する鉄分は新しい赤血球の原料として再利用されるため、赤血球の産生サイクルで鉄分が減っていくことはありません。
しかし、私たちは日常生活の中で汗や尿、便、皮膚の剥離などによって毎日1mg程度の鉄を失っているため、毎日1mgの鉄を体内に取り込む必要があります。これは鉄を1mg摂取すればよい訳ではありません。鉄は消化管から吸収されにくいため、必要な鉄量の数倍〜数十倍を摂取する必要があります。
そのためには毎日バランスのとれた食生活をする必要がありますが、ダイエットなどによって鉄分を含む食品の摂取量が落ち込むと、じわじわと鉄不足に陥り、最終的には鉄欠乏性貧血になってしまいます。
鉄分の必要量が増加している場合
妊娠をした場合、妊娠する前に比べて鉄分やビタミンB12をより多く必要とするため、もともと摂取量が少なかった人はさらに鉄欠乏性貧血になりやすくなります。
妊娠の定期検診では早期発見のために血液検査も行われますので、きちんと受診するようにしましょう。また、出産後も母乳から鉄分が出ていきますので、鉄分の摂取を心掛ける必要があります。
赤血球の産生不良が起きている場合
血球の基となる造血幹細胞に障害があり、赤血球のみならず血球の産生ができない再生不良性貧血もこの原因に当てはまります。再生不良性貧血のほとんどが原因不明であり、かつては治療が困難と言われていましたが、現在は治療法が確立されています。
このほか、腎臓の病気によって腎機能が低下し、赤血球の産生を促すエリスロポエチンというホルモンが十分に分泌されないために赤血球量が減少する腎性貧血もあります。
赤血球の寿命は約120日ですが、それよりも早く赤血球が壊され、産生が追い付かなくなることで貧血が起こります。赤血球が破壊され溶けてしまうことを溶血と呼び、やけどや蛇の毒、生まれつき赤血球に異常がある遺伝が原因の病気、溶血性貧血などの自己免疫性疾患などによって起こります。
また、マラソンやサッカー、剣道など、足裏に反復衝撃が加わる運動が原因となって貧血になることもあります。このような運動を続けていると、衝撃を受けた足裏の血管内で赤血球が破壊されてしまいます。
破壊の程度が軽い場合は血液中に放出されたヘモグロビンが腎臓から再吸収されるため、鉄不足になったり、血尿が出る事もありません。
しかし、継続して赤血球の破壊が続いてしまうと、ヘモグロビンの再吸収が間に合わず尿中に放出されてしまうため、体内では次第に鉄不足が起こるようになります。このように運動が原因となっておこるものをスポーツ貧血と呼びます。
赤血球が破壊されて起こる貧血の場合、一般的な症状のほかに、溶け出た赤血球の成分によって黄疸が現れたり、尿の色が茶褐色になったりします。
貧血の原因となる継続的な出血とは、一時的な大出血というより、慢性的な病気のためにじわじわと絶えず出血が続く事で、気がつかないうちに進行している場合があります。
これには過多月経や子宮筋腫のほか、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がんなど消化器の病気があげられます。
女性の場合、生理は定期的な出血であるためリスクは高くなります。正常な生理の出血であれば、翌月の生理までに鉄分量が回復するようになっていますが、過多月経の場合は出血量が多いため、次第に貧血になっていきます。
特に子宮筋腫の場合は、子宮内膜が多くなるために生理時の出血量も多くなりやすく注意が必要です。
また、生理のない成人男性と閉経後の女性に起こる鉄欠乏性貧血では何らかの病気による出血が疑われるため、検査を受けた方がよいと考えられます。
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