本文へスキップ
貧血の原因・症状・検査・治療・食事・対処法をわかりやすく解説する医療サイト|メディカルアーカイブ

サイトマップ

<当サイトは医療従事者が監修・運営しています>

> > 妊娠による貧血

妊娠による貧血はどうして起きる?知っておくべき3つのポイント

薬剤師のイメージ <この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属
 薬剤師 松田俊浩※

目次

※当サイトは医療専門職が監修した貧血に関する情報を提供していますが、インターネットや本の情報だけで自己診断するのは大変危険です。疑われる症状がある場合は専門医を受診する必要があります。貧血の原因は様々あるため、まずは内科を受診することをお勧めします。

妊娠による貧血(妊婦貧血)は
どうして起きる?

 妊娠をすると母体だけでなく胎児にも栄養と酸素を与え続けなければならず、それだけ多くの血液が必要となります。母体は自らの造血機能をフル回転させ、その必要となる血液を造り続けます。

 厚生労働省「日本人の食事摂取基準」によると、一日当たりの鉄の摂取基準は月経のない女性で6〜6.5mg、妊娠初期で+2.5mg、中期・後期で+15mg、授乳期で+2.5mgとされています。

 また妊娠中は胎盤への血液供給、胎児への栄養、酸素供給、分娩時の大量出血に備えるため、血液量は最大36%増加します(妊娠34週目が最大)。その内訳としては血漿量が最大47%増加し、赤血球量は17%増加します。

 赤血球を増やすことは大変ですが、血漿は容易に増やすことができるため、血液の循環量を増やすために血漿のほうが増加するのですが、その分血液中に占める赤血球の割合が低下してしまいます。

 つまり血液が薄くなるということで、その分酸素の運搬能力が低くなり、結果として貧血が起こりやすい状態となります。

知って損なし!鉄分の多い食品



妊娠後に鉄分補給しても間に合わない!?

 妊娠中は鉄の需要が増大するにもかかわらず、「つわり」で食欲がなくなるなど、鉄不足に陥りやすくなります。つわりは妊娠4〜6週から始まり、7〜9週に辛さのピークを迎えますが、その時期は赤ちゃんの臓器形成にも大事な時期で鉄を必要としています。

 つまり、赤ちゃんにとって大事な時期に、思うように食事から鉄分を摂取できないという事になります。その結果、体内に蓄えられていた鉄が底をつき、貧血になってしまいます。

 妊娠初期は1〜15週ですが、赤ちゃんの臓器が形成されるのは妊娠8〜11週であるため、妊娠に気が付いた時にはすでに大事な時期が過ぎてしまっていることもあります。

 鉄剤による貧血の改善効果は最低でも1〜2ヵ月後であるため、妊娠前から貧血の女性の場合、妊娠に気づいてから慌てて鉄分を摂取しても、赤ちゃんの大事な時期に間に合わなくなる恐れがあります。

 さらに妊娠中期以降は、胎児の急速な発育に伴って鉄の需要が大きく増えるため、鉄分の摂取を非常に意識しなければなりません。日本では妊婦の3割以上が貧血だというデータもあります。

鉄剤を飲んだら貧血はすぐ治る?



貧血は胎児にも悪影響

 貧血は母体にも胎児にも悪い影響を及ぼします。かつて妊婦の貧血は流産や早産の誘因となったり、分娩時の陣痛が弱くなるなどの問題が指摘されていました。

 さらに胎児への鉄の供給が十分にできないと、胎児の発育が遅れ、生まれてきた赤ちゃん自身が貧血になる恐れもあります。

 ただし、最近は妊娠検診が確実に実施されるようになり、そこで発見されれば速やかに鉄剤による治療を行うことができるので、以前のような問題は少なくなっています。しかし、貧血が起きやすい事に変わりはないので、妊娠中は注意する必要があります。

 鉄剤は吐き気を催すこともあり、つわりでただでさえ辛い時期に服用するのは難しい場合もあります。しかし、妊娠中に適切に鉄剤を服用することで、早産や低出生体重児のリスク軽減につながることがわかっています。

70%以上の貧血は食事で改善


妊娠・分娩・授乳期の鉄所要量はどれくらい?
妊婦貧血の治療はどうするの?


関連論文
 妊娠時鉄欠乏性貧血における適切な食事指導に関する基礎的検討  日本看護研究学会

 妊産婦の食生活に関する検討 日本看護科学会

 妊婦貧血と栄養学的対策について

 妊娠貧血とその治療



関連記事
鉄分不足を改善する生活習慣
貧血検査と数値の見方
原因は1つではない!
3分でわかる原因と発症の仕組み
治療はどうやって行う?
ポイントは食事と鉄剤
70%以上の貧血は食事で改善できる
1日に必要な鉄分はどれくらい?
鉄分の吸収を助ける栄養は○○!
摂取量に数倍の差!効果的なヘム鉄とは
鉄剤を飲んだら貧血はすぐ治る?
鉄剤ってそもそもどんな薬?
鉄剤服用の注意点

薬剤師のイメージ
<この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属 薬剤師 松田俊浩※
<著者の略歴>
 貧血全般はもちろんのこと、血液の病気や栄養学を専門として活動しており、貧血の正しい知識や食事療法の指導を行っている。