健康診断などで血液検査をすると、検査結果に「ヘモグロビン濃度」という項目があります。そもそもヘモグロビンとはどのような物質で、基準値を外れるとどうなるのでしょうか?
血液中には「赤血球」と呼ばれる赤い血球がある事はよく知られています。赤血球は全身の細胞に酸素を送り届ける役割を果たしています。赤血球が酸素を運ぶために必要不可欠なのが、赤血球内に存在するヘモグロビンです。
ヘモグロビンは「ヘム」と呼ばれる分子と「グロビン」と呼ばれるポリペプチドから構成されたサブユニットが4つ結合した複合タンパク質であり、これを4量体構造といいます。
ヘムの中心部分には鉄が存在し、鉄は酸素1分子と結合することができます。つまり、1つのヘモグロビンは4つの酸素分子を運ぶことができます。赤血球が赤く見えるのは、ヘモグロビンの鉄が酸素と結びついて錆び色の酸化鉄になるからです。
私たち人間の血液は、鉄を含むヘモグロビンによって酸素を運搬しています。しかし、イカやカニなど一部の生物では、鉄ではなく銅を取り込んでいます。銅を主成分とすると血液は青色になります。
この青い血液の酸素運搬能力は、ヘムを含む赤い血液と比べてわずか10分の1しかなく、効率よく酸素を取り入れることができません。
私たち人間は、鉄を含むヘモグロビンのおかげで空気中から酸素を効率よく全身の細胞に送り届けることができており、その結果、脳を十分に働かせ、体を自在に動かせることができるのです。
また、ヘモグロビンは酸素だけでなく、二酸化炭素とも結合する事ができます。ヘムは酸素と結合して赤色を呈し、二酸化炭素と結合すると赤黒い色を呈するという性質をもっています。そのため酸素をたくさん含んでいる動脈血が鮮やかな赤い色をしているのに対し、二酸化炭素を含んでいる静脈血は赤黒くなるのです。
ヘムを含むタンパク質グロビンが4つ集まってできたのが血液中のヘモグロビンですが、ほかにもヘムを含む物質は体中のいたるところに存在しており、筋肉中にあるミオグロビンもその1つです。ミオグロビンには受け取った酸素を一時蓄えておく機能を持っています。
各臓器の組織にはさまざまなヘムタンパクが存在し、これもヘモグロビンから受け取った酸素を細胞に受け渡す役割をしています。つまり鉄を含む赤色色素のヘムは、酸素の運搬、酸素の貯蔵、細胞内での酸素の受け渡しといった生命の源である酸素をコントロールする大切な役割を担っているのです。
私たちの体内にはヘモグロビンが6×1021個も存在しており、骨髄で毎秒400兆個がつくられ、同時に寿命を迎えたものが脾臓などで同数破壊されています。
原料となる鉄は、破壊された赤血球から再利用されるため、赤血球をつくるために鉄不足になる事はありません。しかし、汗や尿、生理などで日々失われていく鉄を食事から補給できないと、体内の貯蔵鉄を使い果たしてしまい、つくれなくなってしまいます。
HbA1cはヘモグロビンエーワンシーと読み、2010年から糖尿病診断の検査項目に加わった指標です。糖尿病の診断では空腹時の血糖値が用いられてきましたが、血糖値を正確に調べるためには、時間を変えて何回も検査する必要があります。しかし、HbA1cは一回で血糖値の状態を調べる事ができます。
ヘモグロビンは赤血球内に存在するタンパク質で、酸素と結びつく性質があります。これによって赤血球は酸素を運搬する役割を果たしていますが、血液中のブドウ糖とも結びつく性質を持っています。
ヘモグロビンとブドウ糖が結びついたものをHbA1c、またはグリコヘモグロビンと呼びます。ブドウ糖と一度結びつくと離れる事はなく、血液中に過剰なブドウ糖があればどんどん結合し、HbA1cの値は上昇していきます。
HbA1cが高いという事は血糖値が高いということであり、糖尿病もしくは糖尿病予備軍であることを意味します。赤血球が破壊されるまでHbA1cの状態で血液中に存在していることから、これを検査することで過去1〜2か月の血糖値の状態を調べる事ができます。
血糖値は食事の状況やストレスの影響を受けやすく、検査の数日前から食事量を控えるなどすれば一時的に血糖値を下げる事ができます。しかし、HbA1cには過去1〜2か月の血糖値の状況が反映するため、すぐに下がる事はありません。
正常値は6.2%までとされており、6.5%を超えると糖尿病が疑われ、7%を超えると糖尿病性腎症や手足のしびれが起こるようになり、8%を超えると高い確率で合併症が発症し、手足の感覚がなくなったり、失明することもあります。
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