男性は貧血になりにくい体の構造をしているため、男性がなるという事は体内で出血を起こしている重大な病気のサインの恐れがあります。男性がなってしまう原因を知っておきましょう。
人の体には血液1μL中に男性で約500万個、女性で約450万個の赤血球が存在します。男性に比べて女性のほうが貧血になりやすいのは、女性には生理があるため血液が失われるためですが、もともと赤血球の数も女性のほうが少ないからです。
ではなぜ男性のほうが赤血球の数が多いのでしょうか。その理由は男性ホルモンと関わりがあります。男性ホルモンは赤血球をつくる造血因子の分泌を促すことがわかっており、その結果女性よりも赤血球量が多く維持されています。
赤血球は骨髄において造血幹細胞がさかんに分裂増殖することによって造られます。この分裂には造血因子が関わっており、造血因子によって赤血球の数も左右されています。
この造血因子に腎臓から分泌されるエリスロポエチンという物質があります。貧血で赤血球の数が減少すると体内の酸素供給量が減るわけですが、この低酸素状態になると腎臓が造血因子であるエリスロポエチンをさかんにつくるようになります。
腎臓から分泌されたエリスロポエチンはただちに骨髄の造血幹細胞に働きかけ、赤血球をたくさん造るように指示します。その結果赤血球量が増え、一定量に達すると腎臓にも十分な酸素が行くようになり、エリスロポエチンの製造をやめます。このように体内の赤血球量は調節されています。
男性特有の男性ホルモンには腎臓でのエリスロポエチンの製造を促す働きがあることがわかっており、男性ホルモンによってエリスロポエチンがより造られる男性はそれだけ赤血球も数多く造られます。
これが赤血球数の男女差を生んでいるのです。男性ホルモンは70歳前後を境に減少してくるため、それ以降は赤血球数の男女差が縮まっていきます。
男性は貧血になりにくいのですが、それでも貧血症状が現れるという事は、知らないうちに慢性的な出血を起こす病気になっているという事になります。その代表的な病気が消化管疾患で、胃潰瘍や胃がん、大腸がんがそれに当てはまります。
以下に出血を伴う消化管疾患の代表例を示します。
胃・十二指腸潰瘍
胃がん
大腸がん
大腸ポリープ
痔
消化管からの出血は痛みを伴わないため発見が遅れがちですが、胃がんや大腸がんは一刻も早く治療を行う必要があり、発見が遅れれば命取りとなります。
消化管内で出血があるかどうかは健康診断の検便で潜血検査を行っていますが、自分でも簡単に確認する方法があります。それは排便後の便の色を確認することです。もし消化管内で出血している場合、出血部位によって便の色が異なります。
胃や十二指腸で出血している場合は、血液が胃酸や消化酵素と反応して黒く変色するため、便の色はコールタール、または海苔の佃煮にような黒い便となります。
一方、大腸や肛門付近で出血している場合は血液の色が変わらず便と混ざって出てくるため、赤褐色や鮮紅色の便となります。
貧血は「たかが貧血」と甘く考えられがちで、特に男性にはその傾向が強くあります。しかし注意しなければならないことは、生理によって定期的に出血している女性と違い、男性には貧血になる要因がないということです。
つまり、その男性が貧血になるという事は重大な消化管疾患の可能性が高いと認識し、症状が現れたり、便の色に変化が見られた場合は速やかに病院を受診することをお勧めします。
多発性十二指腸たこいぼびらんからの出血が原因と考えられる慢性貧血の1症例 頻回の肛門出血および重篤な鉄欠乏性貧血を主訴としたMunchausen症候群の1例 |
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