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鉄欠乏性貧血の治療はどうする?知っておくべき3つのポイント

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 メディカルアーカイブ所属
 薬剤師 松田俊浩※

目次

※当サイトは医療専門職が監修した貧血に関する情報を提供していますが、インターネットや本の情報だけで自己診断するのは大変危険です。疑われる症状がある場合は専門医を受診する必要があります。貧血の原因は様々あるため、まずは内科を受診することをお勧めします。

まずは鉄欠乏性貧血の原因を取り除く

 鉄欠乏性貧血と一言で言っても、鉄欠乏に至った原因にはさまざまあります。偏った食生活や消化管の病気による鉄の吸収不良、月経過多、消化管出血など慢性出血による鉄の損失などが代表的です。

 どんなに鉄分を補給しても、原因を解決しない限り鉄欠乏性貧血の改善にはつながりません。そのため、まずは治療の前に原因を調べ、それを取り除く必要があります。

 若い女性では原因がはっきりしない場合もありますが、閉経後の女性や成人男性の場合は必ず何らかの原因があり、鉄剤などを使用しなくても原因となる疾患を治療する事で症状が改善する事もあります。

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不足している鉄分を補給する

 赤血球は全身の細胞に酸素を運ぶ働きをしており、生命維持に欠かせない存在です。その赤血球の主成分は鉄を含むヘモグロビンであり、体内で鉄が不足するという事は生命維持に大きな影響を与えます。

 私たちの体内には一時的な鉄不足に対応できるよう3〜4g程度の貯蔵鉄が存在し、体内で不足した場合には少しずつ鉄を放出して不足を補おうとします。そのため、食事からの摂取量が不足したからといって直ちに鉄不足になるわけではありません。

 言い換えれば、鉄欠乏性貧血になったという事は貯蔵鉄をすべて使い果たしたという事であり、食事で鉄分を多く摂る程度では到底補いきれず、鉄剤での補給が必須となります。

 治療を開始すると毎日1〜2錠の鉄剤(鉄量で100〜200mg)を服用していきます。服用を開始すると2週間ほどでヘモグロビンが増え始め、1〜2ヶ月で赤血球量が正常になります。

 貧血症状も改善するため、「貧血が治った」と勘違いしてしまいますが、貯蔵鉄量を回復するためにはさらに1〜2ヶ月服用する必要があります。貯蔵鉄が回復する前に服用をやめてしまうと、すぐにまた症状が悪化してしまいます。

 鉄剤が飲みにくい場合は、静脈注射を行う事があります。鉄は体内に限られた量しかありませんので、実際に不足している量を計算して決められた量の注射をする必要があります。過剰の鉄注射は有害ですので、必要以上の注射は避けなければなりません。

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鉄欠乏性貧血を予防する

 せっかく鉄剤で鉄欠乏性貧血が改善しても、鉄不足に至った生活を改めなければ再発してしまいます。特に偏った食生活による鉄不足が原因だった場合はなおさらです。

 成人男性や閉経後の女性は毎日汗や尿から1mgの鉄を失っているため、食事から1mgの鉄を摂ればよいことになります。しかし、私たちの体は摂った鉄の10%しか吸収できないため、鉄は10mgも摂取する必要があります。

 食事を抜いたりインスタント食品で簡単に済ませたりすると、1日10mgの鉄を摂る事ができません。鉄欠乏状態に陥るのを防ぐためには、規則正しくバランスのとれた食事を心掛ける事です。

 特に成長期の子供や生理のある女性は注意が必要です。普段から鉄分を多く含む食物を摂るように心掛けましょう。また最近では鉄を添加した食品やサプリメントも多く市販されているので、これらを利用する事も効果的です。

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薬剤師のイメージ
<この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属 薬剤師 松田俊浩※
<著者の略歴>
 貧血全般はもちろんのこと、血液の病気や栄養学を専門として活動しており、貧血の正しい知識や食事療法の指導を行っている。