鉄欠乏性貧血を改善するには鉄分の摂取が必要不可欠ですが、ただ鉄分を摂ればよいわけではありません。吸収しにくい鉄分を効率よく摂取すること、赤血球に必要な栄養素を摂取することがポイントです。
食品に含まれる鉄には、吸収されやすいヘム鉄と吸収されにくい非ヘム鉄があります。主に肉や魚などに含まれているヘム鉄の吸収率は10〜20%であるのに対し、野菜や海藻などに含まれている非ヘム鉄の吸収率は1〜6%となっています。
つまり、ヘム鉄は非ヘム鉄に比べて数倍も効率よく鉄分を摂ることができるため、鉄欠乏性貧血の改善には非ヘム鉄よりもヘム鉄を摂ることが大切です。
しかしながら、日本人は非ヘム鉄を多く含む野菜や海藻を多く食べるため、非ヘム鉄からの鉄分摂取の割合が高い傾向にあります。そのため、この吸収されにくい非ヘム鉄の吸収を促進する栄養を併せて摂取し、効率よく非ヘム鉄を体内に取り込むことが大切です。
この非ヘム鉄の吸収を促進する栄養素には、ビタミンCと良質なタンパク質があります。
ビタミンCは胃の中で鉄と作用し、腸管から鉄が吸収されやすい形に変化させる事がわかっています。大豆やほうれん草、海苔などの非ヘム鉄を多く含む食材と、ビタミンCを多く含むブロッコリー、菜の花、オレンジ、イチゴなどを組み合わせて食べれば、効率よく鉄を摂る事ができるのです。
食物から摂取した鉄の吸収率は10%しかなく、ビタミンCの働きがなければ吸収率はさらに下がってしまいます。また赤血球が造られる過程で重要な働きをしている葉酸の働きをビタミンCが高める事もわかっています。つまりビタミンCは貧血予防と改善になくてはならないビタミンなのです。
ただ注意すべきは、野菜や果物に含まれるビタミンCは、長時間加熱すると破壊されやすいという弱点があることです。小松菜やブロッコリーなどの野菜は水につけたままや切ったまま放置せず、炒める時は強火で短時間に調理し、出来たてを食べることがビタミンCの損失を最小限に食い止めるためのコツです。
なお、ジャガイモやサツマイモに含まれるビタミンCは、ビタミンCがデンプンによって守られているため熱に強く破壊されにくいという特徴があります。
ビタミンCは体内で合成することができず水に溶けやすいため、一時的に大量にビタミンCを摂取しても過剰分は排泄されてしまいます。よって貧血を予防するには、ビタミンCを多く含む食品を毎日積極的に摂る事が大切です。
良質なタンパク質は、鉄と結びつく事で腸からの吸収を促進します。また、タンパク質は鉄分の吸収促進作用だけでなく、赤血球を構成する主成分でもあります。そのため、食事で十分なタンパク質が摂取されないと体内に蓄積されているタンパク質が不足し、赤血球の産生が低下してしまいます。
さらに臓器の働きも低下し、胃腸の働きが弱ってくると胃酸の分泌も弱まってしまいます。胃酸には食品中の鉄を溶かし、腸管からの吸収を助ける働きがあるため、胃酸分泌の低下は鉄分の吸収障害を招いてしまいます。このように、良質なタンパク質は貧血を防ぐ上でとても重要な栄養素なのです。
この良質なタンパク質とは、体内でつくることのできない8種類の必須アミノ酸を含んだタンパク質のことをいいます。これらは肉や魚、卵や乳製品、大豆などに含まれていますが、1つの食材だけですべての必須アミノ酸を摂る事はできないので、バランスよく食材を組み合わせる事が大切です。
ビタミンB12と葉酸はともに赤血球のみならず血球すべてを造る際に欠かせない栄養素です。これは血球の核を造る際に関わっています。これらが不足すると血球が正しく造られず、悪性貧血を引き起こしてしまいます。
ビタミンB12はレバーや肉、卵、牛乳に含まれており、これらの食品を普通に食べていれば特に足りなくなる事はありません。ただし手術で胃を切除した場合はビタミンB12の吸収が困難になるため、注射による摂取が必要になります。
葉酸もビタミンB群のひとつで、レバーや貝類、ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、パセリなどに多く含まれています。葉酸も体内でつくる事ができず、食物から摂取しなければなりません。
葉酸は緑黄色野菜に多く含まれており、日本の食生活で欠乏する事はまれです。ただし食事を満足に摂らないアルコール中毒の人にはまれにみられます。
また妊娠中は葉酸の需要が増大し、毎年のように出産を繰り返していると葉酸欠乏になりやすいといわれています。葉酸は水に溶けやすい物質なので、尿などで排泄されやすく体の中に蓄えておく事ができません。毎日できるだけ新鮮な状態の食品を欠かさず食べる事が大切です。
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