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再生不良性貧血の検査と治療がわかる!知るべき4つのポイント

 再生不良性貧血は貧血の中で最も治療が難しい貧血ですが、治療技術の進歩によって生存率も改善しています。発症後は早期に適切な治療を行うことが大切です。

薬剤師のイメージ <この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属
 薬剤師 松田俊浩※

目次

※当サイトは医療専門職が監修した貧血に関する情報を提供していますが、インターネットや本の情報だけで自己診断するのは大変危険です。疑われる症状がある場合は専門医を受診する必要があります。貧血の原因は様々あるため、まずは内科を受診することをお勧めします。

再生不良性貧血の検査と診断

 再生不良性貧血の診断は、まず血液検査で赤血球、白血球、血小板の減少を確認します。すべての血球が減少している汎血球減少が確認された場合は、再生不良性貧血を確定するために骨髄検査を行います。

 骨髄検査とは骨髄液中の造血幹細胞の状態を確認する検査です。この検査は骨髄穿刺とも呼ばれ、針を骨盤あたりの腸骨に刺し、骨髄液を吸引して調べる検査です。再生不良性貧血が進行すると、骨髄中の造血組織が減り、脂肪組織が増加する傾向にあります。

 このほか、放射線物質を投与したのちに画像診断によって骨髄の造血機能を調べる骨髄シンチグラフィと呼ばれる検査を行うこともあります。


治療方針を決める重症度基準とは

 再生不良性貧血の治療は重症度によって異なるため、まずは検査結果から再生不良性貧血の重症度を以下のような基準で判定します。

ステージ1…軽症
 …以下ステージ2以降の基準以外

ステージ2…中等症
 …以下の2つ以上を満たす場合
  網赤血球数が6万個/μL未満
  好中球数が1000個/μL未満
  血小板数が5万個/μL未満

ステージ3…やや重症
 …以下の2つ以上満たし、定期的な輸血を必要とする
  網赤血球数が6万個/μL未満
  好中球数が1000個/μL未満
  血小板数が5万個/μL未満

ステージ4…重症
 …以下の2つ以上満たす場合
  網赤血球数が2万個/μL未満
  好中球数が500個/μL未満
  血小板数が2万個/μL未満

ステージ5…最重症
 …好中球200個/μL未満に加え、以下1つ以上満たす場合
  網赤血球数が2万個/μL未満
  血小板数が2万個/μL未満


再生不良性貧血の治療の進め方

 再生不良性貧血の治療には、免疫抑制療法、骨髄移植、タンパク同化ステロイド療法、支持療法の4つがあります。再生不良性貧血には突発性や二次性など種類がありますが、発症してしまった場合の治療法は同じです。患者の重症度によって治療法が選択されます。

 軽症の患者にはタンパク同化ホルモン(男性ホルモン)を投与します。タンパク同化ホルモンは腎臓に作用して造血因子であるエリスロポエチンを分泌させることで、貧血の症状を改善します。タンパク同化ホルモンを服用すると約60%の人が数ヶ月のうちに寛解に達します。

 寛解とは原因となる異常な造血肝細胞がすべて消えたわけではありませんが、病気の兆候がなくなりある程度正常に戻った状態をいいます。中等症ではタンパク同化ホルモンや免疫抑制療法を行い、頻繁に輸血が必要な場合は骨髄移植を選択します。

 重症では、患者さんの年齢が45歳未満で身内に白血球型の合った骨髄提供者がいる場合は、骨髄移植が第一選択となります。それ以外の場合は免疫抑制療法を行います。骨髄移植が第一選択となるのは、免疫抑制療法を受けた重症患者の約15%が10数年後には白血病や骨髄異形成症候群などの病気になるとの報告があるためです。

 支持療法とは再生不良性貧血の根本的な治療を行うのではなく、病気によって現れる症状の改善に努めて生命の維持をする治療です。赤血球が不足すれば赤血球製剤を輸血し、白血球が少なくなれば白血球を増やすホルモン剤を投与します。

再生不良性貧血の予後

 治療技術の進歩に伴い、早期に治療を開始すれば過半数の患者が輸血がいらなくなるまでに回復するようになりました。また、かつて重症患者の1年生存率は約30%程度でしたが、生存率は著しく改善し重症患者の約80%が5年以上も生きられるようになりました。

 ただし、重症患者で早期に骨髄移植が行えず、免疫機能が低下した状態が続くと、感染症で死亡するケースも少なくありません。また、発症してから長期間が経過すると免疫抑制療法の効果が少なくなるため、赤血球製剤などの輸血が欠かせなくなります。

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再生不良性貧血の原因と症状とは


関連論文
 再生不良性貧血 日本内科学会

 再生不良性貧血 臨床血液2016

 再生不良性貧血の病態と治療 日本内科学会

 再生不良性貧血の治療戦略 臨床血液2018

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<この記事の著者>
 メディカルアーカイブ所属 薬剤師 松田俊浩※
<著者の略歴>
 貧血全般はもちろんのこと、血液の病気や栄養学を専門として活動しており、貧血の正しい知識や食事療法の指導を行っている。